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四国カルストから四万十川を眺めながら食べる恐るべき讃岐うどん③ [四万十川に行こう!]

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 夜中に雨が降ったため、四万十川の水量を気にしながら目を覚ました。明け方には上がったようだが、増水でもしていたら、楽しみにしていた川遊びもできない。「くそっ! ここまできて四万十川と遊べないのか!」と思いながら、あわてて着替えを済ませて外に出る。だが、外に出て空を見上げると、すでに雨雲のかけらも無かった。これなら大丈夫かもしれない。草木の間から見える四万十川は、昨日と同じように穏やかに見える。一刻も早く、近くまで行って確かめたい。私が起きたことに気づいて、騒ぎ始めた愛犬を連れて、散歩がてらに、川の状態が確かめられるカヌー乗り場まで急いで出てみる。
 カヌー乗り場から見る憧れの四万十川は、実に穏やかな風情だった。夜中に雨が降ったことなど微塵も感じさせない。これなら大丈夫だ。
 さっそく身支度をし、車に飛び乗る。めざすは数キロ下流にある「岩間沈下橋」だ。 「岩間沈下橋」は四万十川を紹介する観光ガイドには、必ずといっていいほど掲載されている美しい橋。ここカヌー館からは国道441号線を通っていくが、川からはこの道路は見えず、「カヌー館→岩間沈下橋」は、四万十川の大自然を満喫しながらの、絶好のカヌーツーリングコースにもなっている。asanoshimannto.jpg
 四万十川に沿って走る国道441号線は、非常に細い道で、対向車が来ないことを祈りながらのドライヴとなる。ときおり木々の間から見える四万十川は川幅も広く、流れもゆったりとしている。「ここをカヌーで行けば、気持ちいいだろうな」などと考えながら、蛇行する道に沿ってステアリングを操作する。
 カヌー館のある江川崎から約8キロ。岩間に着くと多少道が広くなった。岩間集落は四万十川を見下ろす斜面にある。昔はここから四万十川を行き来する舟母(せんば)の白い帆が見えていたらしい。
 ここで四万十川は右に大きくカーブしているが、カーブの手前に目指す「岩間沈下橋」が見えた。路肩に車を止め、沈下橋に続く道を探した。すでにこのあたりは稲の刈り取りが終わっている。ほどなく田んぼの間に小さな道を見つけ、刈られた稲の懐かしいにおいをかぎながら、沈下橋目指して降りていく。
 沈下橋は川が増水しても決壊しないように欄干はないし、車一台がやっと通れるくらいの幅しかない。橋の上を歩きながらすぐ下の水面を眺めると、朝日に照らされて川面がキラキラと輝き、その隙間から川底の石が見え隠れしている。
 河原におり、川の中に入ってみる。驚いた小魚の群れが右往左往しながらあわてて泳ぎ去ってゆく。四万十川の悠々たる流れと素朴な沈下橋、空の青さと木々の緑。聞こえてくるのは川のせせらぎと、鳥のさえずりだけ。…最高だ! まさに、この瞬間を味わうためにここまでやってきたのだ。
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 四万十川にしばらく遊んでもらって車に戻ると、川の上流から船が戻ってくるのが見えた。漁から帰ってきたのだろうか。船は器用に沈下橋の下をくぐり、先ほど遊んでいた河原の対岸にあった船着場へと向かっていった。
 カヌー館への帰り道、ビジターの気楽さで、できるならこのあたりに住んでみたい、という話で車内は盛り上がる。ペンションを経営して、ハーブ園を作って、手作りのパンを販売して…と、夢はどんどん広がるが、まぁ、そんな夢を語りたくなるほど魅力的な場所だということなのだ。
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 カヌー館に戻りバンガローのチェックアウトを済ませ、そのまま次の目的地「四国カルスト」へと向かうべく車を走らせる。まず、国道381号線を愛媛県境へと向かい、愛媛に入ってすぐの広見町で、今度は高知県境の檮原(ゆすはら)町をめざして国道320号線を北へと走る。
 実はここからが旅の最大の難所だった。まず、道を間違えた。愛媛県の日吉村に入ったところで、右折せねばならないところを直進してしまい、しかも途中で見つけた「四国カルスト→」の表示板に従って進むと、山奥のまったく身動きの取れぬ場所に突き当たってしまった。来た道を戻り、何とか檮原町までたどり着いたが、そこから「四国カルスト」へと続いていると信じて進んだ道は、またしても間違いだった。そもそもガイドブックに「四国カルスト」として紹介されている場所が、地図の何処なのかがわかっていなかったのである。地図には、かなり広範囲にわたって「四国カルスト」と記載されているだけで、ここだというはっきりとした目的地がわからぬまま車を走らせているのだから、始末が悪い。
 紆余曲折をへて、やっとのことで「四国カルスト」へと向かうであろう(?)「地芳峠」を見つけることができたのだが、これがまた車1台がやっとのことで通れるような細い山道で、しかも1000m級の山へと登っていくのだから、かなりの急勾配。神経をすり減らしながらの運転で、ヘトヘトになってしまった。
 いったいどのくらい時間がたっただろうか、「また、道を間違えたかな?」と、不安がよぎり始めた頃、突然、数メートル先を覆い隠していた山道沿いの木々がなくなり、ガイドブックで見たのと同じ草地と白い石灰岩の岩肌が目に飛び込んできた。間違いない! 「四国カルスト」だ! やっと着いたのだ!
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 「四国の屋根」とよばれる「四国カルスト」は、山口県の「秋吉台」、福岡県の「平尾台」とならぶ日本三大カルストのひとつで、愛媛県と高知県の県境に位置している。東は鳥形山から西は大野ヶ原まで延長25km。(どこを目指せばいいか分からないはずだ!) 標高は1400m以上もあり、春から秋にかけては、山頂の牧草地に牛が放牧されている。
 路肩に車を止め、白い石灰岩が立ち並ぶ広大な牧草地を眺めてみる。牧草地には巨大な風力発電(?)の風車が立ち並び、その下をまるでアリのように小さく見える牛が草を食んでいる。遠くに見えるのは石鎚山だろうか。さえぎるもののない青空のもと、四国の山々が何処までも連なって見える。残暑が厳しいとはいえ、標高1400mを超えているだけあって、ここはさすがに肌寒い。
 感動である。正直言って、ここまですごいとは思わなかった。もちろん苦労してたどり着いたということもあるだろう。だが、それにしてもこの日本離れした大パノラマはすごい!
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 カルストを見渡せる高台にある「姫鶴平(めづるだいら)」にある「姫鶴荘」に入り、遅い昼食をとる。ここには野外バーベキューの設備があったり、5~7人宿泊のできるコテージが設置されていたりする。夏にここのコテージを利用するのもいいかもしれない。
 食事を終えるとすでに午後2時近くなっていた。日が暮れるまでには「しまなみ海道(西瀬戸自動車道)」にのっていたいと考えていたので、これは結構きついスケジュールとなってきた。まぁ、あせっても仕方が無いが、とにかく四国カルストの壮大なパノラマをまぶたに焼付け、地芳峠を来た方向とは反対の松山市に向かって車を走らせて行く。
 「四国カルスト」からの下りの国道440号線は、登りの檮原町側ほどではないが、半端じゃなく狭いし、見通しの悪いカーブが延々と続いていた。しばらく走ると山腹に小さな集落があり、またしばらく山道を下っていくと、また小さな集落がある…結構、これが何度も繰り返される。ちょっと、スイスアルプスで見た風景とも似ていて、とてもいい感じなのだが、下りても下りても、なかなか平地が現れないのには閉口した。
 峠は道幅拡張の工事がいたるところでされており、これが完成すれば「四国カルスト」へのアクセスは格段によくなるだろう。この山に暮らす人にとっても便利なものになるだろうが、自然への影響を考えると「?」マークがつく。
 眼下に「仁淀川」の流れが見え始めると、山道の勾配も少しずつ緩やかになる。まもなく車は440号線に別れを告げ、松山市へとつづく国道33号線へと入る。
 松山市から「しまなみ海道」を目指すルートはいくつかあるが、今回は「松山自動車道」と「今治小松自動車道」を利用するルートを選んだ。これなら時間短縮が見込めるし、そうすれば、朝倉村にある「タオル美術館」にも立ち寄ることができるのではと考えたからだ。
 「タオル美術館ASAKURA」は愛媛県越智郡朝倉村にある、世界初のタオル美術館で、タオルの製造工程の見学、タオルコレクションショップ、絵本作家・俣野温子さんが監修するタオルアートコレクション、「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士・北原照久さんのブリキのおもちゃコレクションなどが展示されている。
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 美術館に到着した時には、すでに午後5時近かったが、入館時間が5時30分までだったのでぎりぎりセーフ。自動車道を使っていなかったら、こうはいかなかっただろう。
 ここ「タオル美術館」に来るのは2度目だが、北原照久さんのブリキのおもちゃコレクションがとても楽しい。懐かしい日本のおもちゃ類はもちろんだが、約60年程前にアメリカのショーウインドーを飾り、宣伝用に使われていたモーションディスプレイはどれも完動品で、その愛らしく素朴な動きには、思わず歩みを止めて見入ってしまうほど。
 美術館の外には広大なハーブ園も広がっているし、レストランはあるし至れり尽せり。
館内にはタオル売り場はもちろん、四国の特産品などの土産売り場なども充実していて、四国の旅の最後に立ち寄るにはちょうどよい場所である。私も高知で買い忘れた、かつおの珍味をここで購入した。
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 お土産をたくさん買い込んで「タオル美術館」を後にし、国道196号線から、渋滞の激しくなった今治市内に入る。すでに夕闇が迫っている。まもなく今治ICから「しまなみ海道」へと入るが、この時間にこの海道を行く車は少ない。
 今治から大島へと渡る「来島海峡大橋」はすでにライトアップされていた。のどかな島の景色の中、夕日をさえぎるように、逆光の中に浮かび上がる「来島海峡大橋」の威圧感はかなりのものである。
 「しまなみ海道」は、このまま尾道まで一直線…というわけではなく、大島と生口島で国道317号線を利用するという、いまだ未完成のルートである。昼間、時間のあるときは、のどかな島の風景を楽しみながらの旅も楽しいだろうが、すっかり暗くなった今となっては、島の生活道である国道を使うのは、わかりにくさが増すだけでかなり不便だ。「しまなみ海道」を使う人が少なくなったというが、これでは仕方があるまい。早期の全線開通に期待したいところだ。
 大島北ICから再び「しまなみ海道」にのり、今治から2番目の島「伯方島」に入る。伯方島は、四国の旅・最後の目的地である。この島にある「さんわ」という店で、旨い塩ラーメンを食べて旅の締めくくりとする。これが当初からの計画だったのだ。
 伯方島は、あの「伯方の塩」の伯方である。伯方島ではメキシコやオーストラリアから天日海塩を取り寄せ、島の自然地下水で溶解し、にがり分を残して結晶させ、自然乾燥して、あの「伯方の塩」を作っている。実は「しまなみ海道」が開通した数年前、伯方島で、その「伯方の塩」を使った旨い「塩ラーメン」を売り出した店があると、ちょっとした話題になった。以来、ずっと気になっていた私がその店を見つけたのが去年の8月…。店の「塩ラーメン」は噂に違わぬ絶品の旨さで、機会があればぜひ、もう一度立ち寄りたいと思っていたのだ。
 「さんわ」は伯方ICから、約5kmほどの町中にあり、「塩ラーメンの店!」という大きな横断幕が、通りに掲げられているので場所は結構わかりやすい。予備知識なしで、初めてここを訪れたときも、迷うことはなかったから、きっと誰にでも分かるだろう。
 店に入りさっそく「塩ラーメン」(\450)を注文。瀬戸内の味「たこめし」とのセットがお得だ。甘みのある塩味のスープと岩海苔の香りがいい。
 瀬戸内の味を味わいながら、私は今回の3日間の旅について思い出していた。今回の旅にタイトルをつけるなら、「四国カルストから四万十川を眺めながら食べる“恐るべき”さぬきうどん」といったところだろうか? 目的は高知・四万十川中流域の旅だったが、途中立ち寄った香川では、さぬきうどんの素朴なうまさに心を打たれ、愛媛との県境の四国カルストでは、その壮大さに感動するという、四国のおもしろさを再発見する旅にもなった。
 今まで以上に四国にはまってしまった感じである。

 午後7時30分。再び「しまなみ海道」にのった愛車CR‐Vは尾道を目指していた。行く手に姿を現した大きな月が幻想的な美しさを見せていた。(おわり)

 

カヌー館→国道441→四万十川・岩間沈下橋→国道441→
→国道381(土佐街道)→
愛媛県・広見→国道320→国道197→
高知県・檮原→国道440(地芳峠)→四国カルスト・姫鶴平
愛媛県・柳谷村→国道440→仁淀川→国道33→松山IC→
→松山自動車道→今治小松自動車道→伊予丹原IC→
→周桑今治広域農道→
タオル美術館(越智郡朝倉村倉上甲2930)
→今治IC→
しまなみ海道→伯方島→
伯方の塩ラーメンさんわ(愛媛県越智郡伯方町)→国道2→広島へ


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