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浜田省吾 ON THE ROAD 2011 "The Last Weekend" 5.14広島グリーンアリーナ [風雲音楽帖]

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 「ロックンロールは悲しみや苦しみを忘れさせてはくれない。悲しみや苦しみを抱えたままダンスさせるのがロックンロールなんだ!」
 ピート・タウンゼントの言葉を引用して、そう語りかける省吾。
 「明日からはまた、自分の持ち場に戻って、今の日本の困難な状況に立ち向かっていくキミたちに、闘う英気を養ってもらえるようなステージにしたい」
 5月14日(土)に広島グリーンアリーナで開催された浜田省吾の広島公演は、同世代の仲間たちと一緒に歌い、手拍子をしながら、省吾から明日からまた闘っていくために必要なたくさんの元気とやる気をもらうことのできたLIVEだった。

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 ステージ上に設置された横長の巨大なLEDモニターに「SHOGO HAMADA ON THE ROAD 2011 "The Last Weekend"」のツアーロゴが輝いている。開演時間が迫ると、待ちきれない観客席から手拍子が沸き起こる。私にとっても2005年10月30日「ON THE ROAD 2005 "MY FIRST LOVE"」(広島グリーンアリーナ)以来の浜田省吾のライブ参戦。どうしたって気持ちが高ぶってくる。
 場内が暗転し、ひときわ大きな歓声が上がると同時に、オープニングナンバーの「ON THE ROAD」のイントロがゆっくり始まった。それにあわせて、走る省吾のCGが映し出されたLEDモニターがゆっくりと上昇していく。黒の衣装でバッチリと決めた省吾は、私より一回り年上だとはとても思えない軽快な動きだ。メドレー形式で、2曲目の「この夜に乾杯」が始まると、ドラムセット付近に置かれたカメラから省吾の背中越しにアリーナの観客席がLEDモニターに映し出される。ステージ上のモニターはいつしか3面に分割されている。
 小田原豊のドラムスがリズムを刻んだまま「Hello Rock & Roll City」へ。もちろん「Hello! Hiroshima City!」の大合唱だ。ステージ横にまっすぐ伸びた花道を走る省吾と町支寛二。古村敏比古も反対方向へ軽いステップで飛び出し、強烈なサックスソロを聴かせてくれる。
 阪神大震災の復興シングル「恋は魔法さ」では、震災直後の映像から、次第に復興していく神戸の様子が映し出される。今回、3.11東日本大震災で被災された方々へ、エールを送るようなポジティブな歌声とビートが印象的だ。
 「広島に帰ってきました。マイホームタウンに戻れてうれしいです。」
 5曲目の「勝利への道」が終わると、そう語りかける省吾。
 「実は昨日、あるホテルでエレベーターに乗ろうとしたら、先に3人ほど笑顔の屈強な男たちが乗っていて、「どうぞ!」ってニコニコして手招きしくれるんだけど、「いいえ、次のに乗ります!」「まぁ、どうぞ!」「いいえ、お先にどうぞ!」って断り続けた(笑)。そのうちの一人は、ジャイアンツの原辰徳監督だったんだ! 絶対乗るもんか!(昨日はカープがジャイアンツに負けた)」
 「今日は(カープ)どうなったんだろう?(勝ったよーの声に)おおっ!勝ったの?よし、それじゃあ飲みに行こう!(男たちの「一緒に連れてってー」の声に)お姉さんの方がいいよ(笑)」
 印象的なギターアルペジオから始まる「初恋」は、省吾お気に入りの名曲の一節をはさみながら、「オレの初恋はRock'n Roll」と、自身の成長を歌うHappyなナンバー。続く「Thank you」は、省吾や佐野元春ら、ロック界の重鎮たちと活動を共にする長田進のソリッドなギターが冴える。
 そんな少々リラックスした雰囲気が、町支寛二の弾く「MONEY」の悲鳴のようなギターリフで引き裂かれる。暗いステージを、真っ赤なライトと、点滅するフラッシュライトが照らし、「Money~!」という絶叫がアリーナに響く。
 「どうもありがとう。えー今回のツアーはニューアルバムも何もないツアーなので、選曲が自由。次の曲は、ちょっと古い1977年の曲。…というより、1988年に、渚園のステージで、麦わら帽子をかぶって、この曲の最後にそれを、こんなふうに飛ばすんだけど、それっきり帰ってこなかったっていう(笑)。知っている人いるかな?」
 町支寛二と長田進によるツインリードのメロディーも懐かしい「愛のかけひき」。省吾は、やはり帽子をかぶってこの曲を歌ったが、帽子は飛ばさなかった。
 ストリングスのメンバー紹介の後、「ここからはバラードを2曲やりたいと思います」といって、「君の名を呼ぶ」と「もうひとつの土曜日」を披露。「もうひとつの土曜日を」毎晩のように聞いていた大学時代が思いだされる。
 「土曜日ということで、土曜日の曲をやってみました」
 「今回のツアーは日本を代表する最高のメンバーと一緒にやっています。そして、アルバムのアレンジをしてもらっている星勝さんにも、コンダクターとして参加してもらってます」という紹介で星勝さんが登場し、指揮棒を持ってステージの中央へ。省吾も、オーケストラの一員という感じで、ドラムセットの前に待機する。曲は「君が人生の時」。最高のメンバーによる贅沢な演奏だ。
 省吾はここで一旦バックステージへと消え、ストリングス&ホーンセクションを含む残ったメンバーのみで「BLOOD LINE」と「我が心のマリア」がインストゥルメンタルで演奏される。
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 大きな拍手の中、真っ暗な会場にヘリコプターの爆音が響く。サーチライトのようにアリーナを照らす何本ものスポットライト。「A NEW STYLE WAR」で後半のスタートだ。「ひび割れたUNCLEAR POWER 雨に溶け 風に乗って」という歌詞は、この曲が発表された1986年に起きたチェルノブイリ原発事故のことを歌ったものだが、3.11以後、まさかこんなにもリアリティを持って迫ってくることになろうとは…。続く「裸の王達」「詩人の鐘」も我々に警鐘を鳴らし続ける。まさに我々はNEW STYLE WARの真っただ中にいるのだ。
 そんな現状認識の後、省吾の視線は、これまで歩んできた道に向けられる。もちろんそれは、省吾個人の歩んできた道のりだけでなく、戦後日本が歩んできた道のりでもある。「THEME OF FATHER'S SON-遥かなる我家」では、日本人の持つ原風景が、「RISING SUN―風の勲章」では、戦後日本の復興の様子が省吾の視点で切り取られる。LEDモニターに映し出された、タクシーに乗った子どもが徐々に成長し、結婚し、子どもを設け、周りの景色もどんどん変わっていく、という個性的な画風のアニメーションが印象的だ。
 ステージ後ろのスクリーンに、アルバム「J.BOY」に使われていた若き省吾の写真とJ.BOYの文字が浮かび上がる。
 「25年前の1986年、これからバブルに突入していこうとする時代で、誰もが浮足立ってた。でもそのバブルもすぐにはじけて、そこからの10年は失われた10年といわれた。そしてあの9.11以後も、失われた10年といわれ…、さらに3.11以後は、全く違う世の中になってしまった。今、日本は戦後、最も困難な時に直面している。この悲劇を乗り越えて、新しい価値観を見つけるか、このまま沈んでいくか…。25年前とは、全く違った立ち位置で、この曲を歌います。でも、そこにあるのはあのころと変わらない想いです。SHOW ME YOUR WAY・・・ J.BOY」
 人差し指と親指を「J」の形にして腕を突き上げ、会場全体で叫ぶ「J.BOY」。それぞれの人が持つ悲しみや苦しみは消すことはできないけれど、この一体感は確実に明日を闘っていくための力になる。
 続いて、大歓声の中、ストリングスで静かに始まる「僕と彼女と週末に」。だが、そのメロディーは少し不安を感じさせるメロディーでもある。昨年発売されたベストアルバム、そして「The Last Weekend」と名付けられたツアーのメインとして位置付けられているこの曲。「個人的なことを言えば、デビューして35周年ということもあるんだけど、3.11を境にこのツアーは、全然別の意味を持つことになった」と語った省吾。恐れを知らぬ自惚れた我々は、「宇宙の力」を再び「悪魔」に変えてしまった。3.11以後、制御できない目に見えぬ「悪魔」におびえる日々…。次々に明らかになっていく“想定外”の事実。世界最初の被爆地で生まれたシンガーによって1981年に鳴らされ、当時は誰も聞こうとしなかった警鐘に、30年後の現在、多くの人が耳を傾けざるを得ない状況となっている。この曲が収録されたベストアルバムが昨年発売されたということも、何やら暗示的だ。
 本篇のラストナンバーはハードなギターリフの「愛の世代の前に」。すりかえられた希望は、脆くも崩れ落ちた。ハードなギターリフとパワフルなドラムスのリズムに身を委ね、我々は、虚しく踊り続けるしかないのだろうか? 
 ギターを高く突き上げ、ステージを後にする省吾。
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 「えっ?ひょとして終わりなの」というささやきが聞こえてくる。お客さんは、省吾のライブではお馴染の休憩だと思ったのか、まばらなアンコールの手拍子だ。
 アリーナ後方に設置された、センターステージが徐々にせりあがり、音響システムや照明が少しずつ下がってくる。ステージからセンターステージへの花道も組み上げられ、スタッフが忙しく動き回っている。アンコールはセンターステージでの演奏のようだ。少しずつアンコールの手拍子も大きくなっていく。
 LEDモニターに映し出される省吾のビデオメッセージ。「今日は2010年3月8日。ファンクラブの撮影で沖縄にいます。これを観ているキミたちは、2011年5月14日土曜日、広島グリーンアリーナ。これを観てくれているってことは、おれも無事にそこでコンサートをやっているってことだよね」
 ウオォ~という大歓声の中、ステージ上に再び姿を現した省吾とバンドメンバーたち。「これって、アンコールでいいんだよね?」と、さっきのまばらな手拍子を指して、おどける省吾。
 花道を通って、センターステージにたどりつき、楽器のセッティングが終わるとアンコールの演奏が始まる。センターステージでの1曲目は「光と影の季節」だ。省吾はどこからでも自分の姿がよく見えるように円形のステージを歩きまわり、観客席に手を振り、マイクを突きだす。
 「終わりなき疾走」、「君がいるところがMy Sweet Home」の演奏をはさんで恒例の年齢調査。「DVDの中で、これからもコンサートで必ずやるって言っているんで」なんて言いながら笑う省吾。前回多かった30代が少なくなり、私たち40歳代が最も多い。10代や60代なんていう人も結構いた。
 「昨日は平和公園に行って、慰霊碑にお参してきたんだけれど、親父の名前も書いて入れてもらっているからね」
 「昔、1971年ごろ、これは何度も話したことだけど、オレは英数学館っていう予備校に通っていて、今でもあるのかなぁ? 髪の毛も肩まであって、付き合っていた女の子にも振られて、予備校もやめて、あそこの平和の灯のところに上がって、草に火をつけて、それで煙草に火をつけて吸っていた。そしたら、ドドドド…って、こんなふうに頭に日の丸をつけたハーレーにまたがったおじさんが下に来て、「こらこら君たち、そんなことをしちゃあいけないよ」って(笑)。その人が言うには、おれは特攻隊員だったんだけど、出撃する前に戦争が終わって、おれは、日本が負けたアメリカっていう国はどんなんだろうと思って、これに乗ってアメリカを旅してきたって…。」
 「結局、何が言いたいかっていうと、そんなことをしていた俺みたいなやつでも、普通の大人になれるよってこと(笑)」
 ♪~He was so lonely in the days of youth.~のコーラスからドラムスのフィルインでスタートする「I am a father」。もはや省吾のライブにはなくてはならないナンバーだろう。この頃は、「疲れたどりついた家 窓の明かりまるでダイヤモンド」という歌詞がほんとに心にしみる。続く、「ラストショー」では、歌詞の「さよなら」に合わせてみんなで手を振るのだが、なんだかあの頃の自分に手を振っているような、若いころの自分を俯瞰しているような気持ちになってくる。そして、「ラストダンス」はアリーナに降り注ぐようなミラーボールの光の中での演奏。まるで夜空の星があふれて落ちてきたような光景だ。
 バンドメンバーはメインステージにもどるが、省吾はピアノの小島良喜とともにセンターステージに残る。ブルージーなピアノのイントロから始められたのは「家路」だ。途中からはストリングスを含むメインステージのメンバーも演奏に加わった。
 大きな歓声の中、ステージを後にする省吾とメンバー。でもこれでは終わらない。すぐさまステージに戻ってくると、ストリングスやホーンの皆さんを含めた今夜のバンドメンバー全員でステージの前に整列して一礼。そして、再び各自のポジションに着く。
 荘厳なハモンドオルガンの音色が静かに聞こえてくる。ラストナンバーは「日はまた昇る」だ。ゆったりとしたサウンドに身を委ねながら、省吾の歌う歌詞を何度も頭の中で反芻する。そして、テレビ画面を通してみた3.11の震災の様子、4月から仕事内容が変わり、わけがわからぬまま目の前の仕事におわれている今の自分を思う…。それでも、自分はこの人生を受け入れ、楽しむほかはないのだ。
 片手でギターを高く突き上げ、声援にこたえる省吾。町支寛二はギターのピックをいくつも客席に投げ入れている。バックステージに消える省吾とバンドメンバーを見送り、客電がつくと、みんな満足した表情で席を立ち始める。
 3.11の震災から2カ月。今夜、省吾の歌声を聞くことができて、本当によかった。本当に大きな元気をもらった。次回、9月の広島公演にもチャンスがあればぜひ参加したいと思う。
 帰り道は、久々に晴れ晴れとした気持ちになった。 
  
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SET LIST
01.ON THE ROAD
02.この夜に乾杯
03.Hello Rock & Roll City
04.恋は魔法さ
05.勝利への道
06.初恋
07.Thank you
08.MONEY
09.愛のかけひき
10.君の名を呼ぶ
11.もうひとつの土曜日
12.君が人生の時
13.BLOOD LINE (inst.)
14.我が心のマリア (inst.)
15.A NEW STYLE WAR
16.裸の王達
17.詩人の鐘
18.THEME OF FATHER'S SON-遥かなる我家
19.RISING SUN-風の勲章-
20.J.BOY
21.僕と彼女と週末に
22.愛の世代の前に

encore
23.光と影の季節
24.終わりなき疾走
25.君がいるところがMy Sweet Home
26.I am a father
27.ラストショー
28.ラストダンス
29.家路

encore 2
30.日はまた昇る


5月14日(土)広島グリーンアリーナ
開場17:00 開演18:00
S席 スタンド F 24列 21番


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